中国伝承医学とは~中国医学の流派~

当院は中国伝承医学派に属する龍門派という流派の治療体系をベースにしています。一般の方は「中国医学に流派なんてあるの?」と疑問に思われるかもしれませんが、湯液(いわゆる漢方)にも鍼灸にも古代から現代にいたるまでいろいろな流派があり、理論や治療法もさまざまです(事情は日本も同じです)。その流れを書くだけで大部な書物ができるくらいです。ここではそれをまとめる余裕はありませんし、私にそれを行う能力もありません。そこでここできわめて単純化して、二つの大きな流れとして分類してみましょう。その二つをここでは現代中医学と中国伝承医学というふうに名付けておきます。

現代中医学は主として中華人民共和国ができてから体系づけられた流派の総称です。それに対して中国伝承医学は、中華人民共和国が建国される以前から続いている中国の古流派の総称です。前者は大学での研究成果をもとにして構築された流派であり、後者は師から弟子へ、あるいは親から子へ代々受け継がれてきた流派の総称です。まずは現代中医学の大きな流れから述べてみます。

現代中医学~三大流派~

中華人民共和国の建国以降、各地に中国医学を研究・臨床する大学・病院・研究所等が建設されました。臨床家の養成施設(中医学院、現在の中医薬大学等)で共通して使えるテキストを作成し、それにもとづいて教育・臨床されてきました。これが現代中医学です。現代中医学には三つの大きな流れがあります。ひとつは弁証論治派で、これは中国医学の古典、特に湯液(いわゆる漢方)理論をもとに弁証論治という体系を作り出そうとする流れです。二つ目は中西医結合派でこれは中国医学と西洋医学を融合させようとする流れです。三つ目は人体を解剖や生理学といった西洋医学的観点から分析し新しい鍼灸理論を体系立てようとする流れです。これは特に総称名は無いようですが、ここでは新理論派としておきます。

■弁証論治派
弁証論治派は一時期非常に流行りました。しかし鍼灸理論を湯液理論をベースに構築しようとしたため、古典にもとづく鍼灸理論との結合があまりうまくいきませんでした。また詳細に弁証論治しようと思えばかなり手間がかかり、一日に大勢の人を治療しなければならない現在の中国の医療機関ではあまり向かないようです。中国では少数派になっている模様です。日本ではまだ大勢います。

■中西医結合派
中西医結合派も一時期おおいに流行りました。ただしこれはどちらかというと研究者向けの派でした。研究施設を離れた臨床家には向きません。特に日本の鍼灸師や薬剤師は開業しても西洋医学的な検査や診断はできませんので、あまり受け入れられませんでした。中国医学に関心のある日本の医師は取り組んでいらっしゃる方もいるかもしれません。

■新理論派
新理論派は現在の中国で一番は流行っているようです。いろいろな理論体系が生み出されています。基本的に解剖や生理学をもとにして西洋医学的な観点から鍼灸理論を組み立てようとしますので、非常に分かりやすくて効果があるため人気があります。また、センスや経験を中国伝承医学派ほど要求されませんので、多くの臨床家に技術が共有されやすいのも人気の理由のひとつだと思われます。

中国伝承医学

中国医学は西洋医学が発達する前に基本的な体系ができたために、非常に感性や経験に重点を置いた理論体系になっています。そのためにあまり多数の学生に学校で教えるには向かない技術です。昔から国の制度として医師養成は行われてきましたが、師から弟子へ、親から子へマンツーマンで教えるというのが基本でした。このあたりは武術や芸事と同じです。古代からいくつも流派が形成されました。その流れをくむ技術を受け継いでいるのが老中医とよばれる人たちです。現代中医学の養成施設で教育に携わっていた人もいますし、市井で活躍されていた方もいらっしゃいます。年齢的には教育施設での指導を退いた方ぐらいです。

現代になって老中医が流派や家伝の技術を書物として公開するようになったり、中国の養成施設へ留学した人が、老中医へ弟子入りするようなったりして技術の一端が、日本でも専門家の間で広く知られるようになりました。

この派の特徴はなんといっても長い歴史によって積み上げられた思想と技術と経験です。現代中医の弁証論治派と重なる部分も多いですが、経験の蓄積がおおい分、臨床的に深みと広がりがあります。

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